八卦掌の用法(摔法と擒拿)
今回は八卦掌の用法例として、老三掌(単換掌、双換掌、順勢掌)に含まれる摔法(投げ技)や擒拿技法を紹介します。
八卦掌の用法の特徴
八卦掌の用法は、大別すると以下の三点に分類できます。
- 打法…打撃、掌打、肘打、蹴り技など
- 摔法…投げ技
- 擒拿…関節技
八卦掌の打法に関しては、【八卦掌の技法】のぺージをご覧下さい。
八卦掌の投げ技や擒拿技法の特徴としては、やはり螺旋の力を利用しているという事です。
螺旋勁を使う事で、歯車がかみ合うように、相手に渦巻き状の力を作用させ、相手のほうが回転して崩れていきます。
逆に言うと、螺旋勁がない場合は、力と力が衝突してしまい、相手の抵抗が起きてしまうので、技の形だけを知っていても用をなしません。
今回は、老三掌に含まれる技法の中から、両肩をつかまれた場合の対処法を紹介します。基本的には上腕を持たれた場合や前腕を持たれた場合も同様の操作で応用が可能です。
ただし、手首をクロスで持たれた場合などは、別の技法に変化したり、工夫が必要となります。
老三掌の用法例
八卦掌の老三掌(単換掌、双換掌、順勢掌)に含まれる摔法や擒拿技法の用法例を紹介します。
単換掌の用法例
まず、単換掌の套路(型)の動きを見てみましょう。
次に用法例を見てみましょう。
圧掌の用法例
続いて単換掌からの変化として、圧掌を用いた応用例を紹介します。
圧掌は、本来は相手の打撃に対し、穿掌で交差した後、下方へ圧する技法ですが、ここでは摔法としての単換掌から変化として紹介します。
単換掌の動画と見比べると、相手の崩れる方向が異なるのが分かると思います。
指天挿地の用法例
次に圧掌へ変化しても、相手の抵抗が起きてしまった場合の指天挿地への変化を紹介します。
順勢掌の用法例
ここまで単換掌で抵抗が起きてしまった場合に、圧掌などへの変化を紹介してきましたが、こちらが変化する前に、相手が重心を落とし、圧掌や指天挿地に変化できない場合の対処法を紹介します。
動画では、安全性を考慮し、平円としていますが、実用時は縦回転を用います。
単換掌の別法
ここまでは単換掌の用法例1の変化や応用を紹介してきましたが、ここからは単換掌の別法を紹介します。
上の動画では、閉門掩肘で相手の攻撃に対処し、その後擺歩して相手に密着しています。
その際、相手が上段を突いてきた場合は、相手の手の下から、中段を突いてきた場合は、相手の手の上からこちらの手を挿し込みます。
この状態からは様々な打法への変化が可能ですし、動画のように投げる事も可能です。
擺歩した足は、相手の膝裏に付けますが、足をかけて倒すのではなく、やはり螺旋勁を用いて崩します。
撩掌の用法例
上記で紹介した単換掌の別法の変化として、撩掌を用いた摔法を紹介します。
この技法も螺旋勁の習得が必須で、螺旋勁がないと相手の抵抗が起きてしまいます。
ちなみに動画の一本目の撩掌では、相手の抵抗が起きてしまい技が止まっています。二本目や反対向きの動画と見比べてみて下さい。
燕子抄水の用法例
続いては撩掌の変化として燕子抄水の用法例です。
宋派八卦掌の双換掌や馬貴派八卦掌の三穿掌に出てくる穿掌から転身して燕子抄水への変化を紹介します。
穿掌から燕子抄水への変化では、まず穿掌を相手に受けさせる事で、相手の抵抗を導きます。
相手が穿掌に抵抗してくれている間に転身し、蛇のように相手とのすき間に手を挿し込みます。
本来は、下勢で行いますが、安全性を考慮して、中架子で行っています。
走馬活携の用法例
最後に、単換掌や双換掌に出てくる走馬活携を応用した擒拿技法を紹介します。
走馬活携とは、走っている馬に縄をかけて生け捕る動作です。
単換掌の項で紹介した閉門掩肘から推窓望月の動作を小さく相手の手首にかけて崩し、その後相手の頭部に渦巻き状の力を注入して崩します。
動画だと、強引に相手の頭を押さえているように見えますが、実際は螺旋勁を用いています。
螺旋勁がないと相手の抵抗が起きてしまいますし、受け手が首を痛めてしまうので、注意して下さい。
※ 当サイトで紹介した技法を使用して、ケガや事故が起きた場合でも、当会は一切責任を負いません。
求心的な螺旋勁
ここまで紹介した技法は、主に遠心的、あるいは外向的な螺旋勁を利用したものです。
具体的には、自己の身体内で発生させた螺旋の力を相手との接触部を通じて相手に作用させ、相手を浮かせ回転させてかけます。
イメージとしては、回っている独楽の回転が、相手に伝わり、弾かれるように、こちらから離れていきます。
それに対し、求心的な螺旋勁の場合は、渦巻きに吸い込まれるように、こちらへ落ちてきます。
こうやれば、こうなるという仮説と立て、仲間と共に検証し、平円や立円、斜め、大回りなど各実験データを感覚として体にインプットしていきます。
まとめ
今回は八卦掌の用法例として、老三掌(単換掌、双換掌、順勢掌)に含まれる投げ技や擒拿技法を中心に紹介してみましたが、いかがだったでしょうか。
冒頭でも触れましたが、やはり八卦掌の摔法や擒拿は、螺旋勁の習得が必須となります。螺旋勁がない場合は、力と力が衝突してしまって、技がかかりません。
そして、相手の抵抗が起きてしまった場合は、瞬時に力の方向を変えたり、歩法を用いたりしての変化が重要となります。
用法練習では、技がかかった、かからないといった点ではなく、相手にどのような力が作用し、どのような崩れ方をしたのかを検証していく事が大切です。
八卦掌の用法は無限ですので、今後も機会をみて追加していきたいと思います。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
八卦掌の打撃を中心とした技法は【八卦掌の技(防御と打法)】のページをご覧下さい。
今回、用法を紹介した老三掌などの八卦掌の套路は【八卦掌の型】のページで紹介しています。